January 22, 2018, 6:35 pm
無断録音「学問の自由侵害」 解雇の元教授、明治学院を提訴
■「東京新聞」(2017年1月7日)
授業を無断録音された上、懲戒解雇されたのは不当などとして、明治学院大(東京都港区)の元教授寄川条路さん(55)が、同大を運営する学校法人「明治学院」に教授としての地位確認と、慰謝料など約1,370万円を求める訴訟を東京地裁に起こしたことが、関係者への取材で分かった。
訴えなどによると、寄川さんは一般教養で倫理学を担当。2015年4月の授業で、大学の運営方針を批判したことなどを理由に、同12月に大学側から厳重注意を受けた。大学側は、授業の録音を聞いて寄川さんの批判を知ったと認めたため、寄川さんは学生が何らかの情報を知っているかもしれないと推測。テスト用紙の余白に、大学側の教授の名前を挙げ「録音テープを渡した人を探している」と印刷し、呼び掛けた。これに対し大学側は、その教授が録音に関わった印象を与え、名誉毀損に当たるなどとして昨年10月に懲戒解雇した。
寄川さんは「大学側が授業を録音したのは、表現の自由や学問の自由の侵害だ」と主張。労働審判を申し立てたが解決に至らず、訴訟に移行した。大学側は審判で職員による録音を認めた上で「録音したのは実質的には授業でなく、(年度初めに授業方針を説明する)ガイダンス。授業内容を根拠としての解雇ではない」と説明していた。
同大広報課は、本紙の取材に「懲戒処分は手続きに沿って適正に判断した。個別案件についてはコメントできない」としている。
揺らぐ学問の自由、「盗聴」告発の明治学院教授
■「上智新聞」(2017年2月1日)
2016年の学長選任規則改正による学長選挙の廃止を受け、本紙1月号は「問われる『大学の自治』」と題した記事を掲載した。
機を同じくして、東京新聞1月7日朝刊に「『無断録音 学問の自由侵害』」という記事が掲載された。明治学院大学の寄川条路教授が、講義の無断録音及び懲戒解雇は不当だとして学校法人「明治学院」に対し、地位確認や慰謝料などを求める訴訟を起こしたという内容だ。「学問の自由の侵害だ」とコメントを出している寄川教授に対し、本紙が独自に取材した。
寄川教授は以前から、講義の受講上限人数などをめぐり大学側と対立していた。大学側は学期初め講義を無断で録音し、教員の処分を検討する会議で使用していたという。寄川教授が秘密録音を「組織的な盗聴」だと関係者の名前とともに告発し、学生に情報提供を呼びかけると、大学側は名誉毀損だとして同教授を懲戒解雇。また教科書や講義内容が大学の理念にそぐわず教員不適格だとして、普通解雇を重ねて行ってきたという。寄川教授は「懲戒解雇だけでは、判例などから不当と判断されやすいため、より確実に解雇したいのだろう」と推測する。
大学側は労働審判で録音の事実を認めながらも、録音したのは学期初回のガイダンスであり、解雇理由に講義内容は関係ないと主張。復職を求める寄川教授と金銭解決を目指す大学側とで決着がつかず、訴訟へと至った。現在も係争中で、寄川教授は今後訴訟の経過に応じて順次情報を公開する予定だという。
寄川教授は「言論と表現の自由が保障されるべきなのは大学に限った話ではない」としながらも「講義の盗聴は教員のみならず学生たちの間にも不信感を招く。信頼関係を確立すべき教育の場では最も不適切な行為だ」と語る。また、学生に向けて「大学は何を言いたいか、何を聞きたいかを自分で考えることができる場。それを大事にしてほしいが、今行われているのはそうした場の破壊にほかならない」と大学の価値とその危機に目を向ける重要さを訴えた。(矢部新・成田一貴)
※寄川条路氏は学校法人明治学院と地位確認係争中であるため「明治学院大学教授」と表記しました。
記者の目
事態の詳細は司法の場で問われるべき問題であり、本紙が口を出せることではない。ツイッターを見れば、明治学院大学の学生から「教授の言い分や新聞の論調は一面的だ」等の批判もあるようだ。
だが学問の自由という観点から言えば、大学側が無断で講義を録音していたという一点のみでも、紙幅を割いて追うべき理由としては十分だ。
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January 22, 2018, 6:39 pm
■紙の爆弾(2017年2月7日)
授業を無断録音し教授を解雇した明治学院大学の犯罪
浅野健一
東京都港区白金台にある明治学院大学(明学大、松原康雄学長)といえば、日本最古のミッションスクールで、いまでは「SEALDs」が誕生したリベラルな学風で知られるが、この大学で教職員がある教授の講義を無断録音して、教授が教室で大学批判をしたとして懲戒解雇し、教授側が東京地裁に地位確認の裁判を起こすという紛争が起きている。
筆者も3年前、理解不能の理由で定年延長を拒否されて同志社大学から完全追放され、京都地裁で地位確認訴訟を起こしており、今年3月1日に判決が言い渡される。一方、文部科学省の元高等教育局長が早稲田大学教授に天下りした問題も発覚した。明学大事案をきっかけとして、「大学教授」のあり方を考えたい。
大学ぐるみで隠し録り、盗聴
1月7日付の東京新聞に〈無断録音「学問の自由侵害」解雇の元教授、明治学院を提訴〉という記事が載った。このニュースは他紙には出ていない。同記事によると、授業を秘密録音(盗聴)されたことを告発して解雇されたのは倫理学を担当する寄川条路・明学大教養教育センター教授(55歳)だ。
寄川氏は昨年12月28日、明学大を運営する学校法人明治学院に教授としての地位確認と、慰謝料など約1,370万円を求める訴訟を東京地裁に起こした。
訴状などによると、寄川氏は2015年4月の講義で、大学の運営方針を批判したことなどを理由に、同12月に大学側から厳重注意を受けた。大学側は、授業の録音を聞いて寄川氏の批判を知ったと認めたため、寄川氏は学生が何らかの情報を知っているかもしれないと推測。テスト用紙の余白に大学側の教授の名前を挙げ「録音テープを渡した人を探している」と印刷し、呼び掛けた。これに対し大学側は、その教授が録音に関わった印象を与え、名誉毀損に当たるなどとして昨年10月17日付で懲戒解雇した。
寄川氏は文学博士で、『ヘーゲル哲学入門』や『初期ヘーゲル哲学の軌跡』などの著書があり、「紀川しのろ」の筆名で随筆家としても知られ、和辻賞(日本倫理学会)、日本随筆家協会賞などを受賞している。14年10月には、東京都内の古書店でドイツの哲学者ヘーゲルの自筆書き込み本を発見し話題になった。
寄川氏は同年10月28日、東京地裁に労働審判の申立を行なった。12月8日に地裁は「解雇は無効だから復職を勧める」とし、復職させるよう大学側を説得したが、大学側は「復職ではなく金銭解決を望む」と表明、寄川氏は「金銭解決ではなく復職」と要望したため、地位確認訴訟に移行することになった。
大学側は労働審判で秘密録音の事実を認めた。寄川氏の授業を盗聴したのは教養教育センター長の黒川貞生教授で、実際に授業を録音したのは、大学によれば「教職員」とのことで特定されていない。
授業を録音していたのは大学の方針を批判している教員を処分するためで、録音テープを使用していたのは、調査委員長の嶋田彩司教授(元センター長)。解雇理由は「懲戒解雇と普通解雇」の二つがある。懲戒解雇の理由は「授業の秘密録音が行われていたことを、関与した教員の名前を挙げて告発した行為。授業で学生に公表し、学内の人権委員会、教授会、教員組合に、学外の裁判所、マスコミ、文部科学省などに、通知したこと」など。普通解雇の理由は、「授業の内容と教科書の内容が大学の権威とキリスト教主義を批判しているから」だとされた。
東京新聞の記事によると、大学側は労働審判で職員による録音を認めたうえで「録音したのは実質的には授業でなく、(年度初めの)ガイダンス。授業内容を根拠としての解雇ではない」と説明した。
授業の盗聴は教育の自由の侵害
これに対し、寄川氏は「授業の盗聴や秘密録音、録音テープの無断使用は不法行為である」「授業や教科書の検閲は、表現の自由、学問の自由、教育の自由の侵害である」と主張している。
寄川教授はこう訴えている。
〈副学長によれば、明治学院大学では、授業の盗聴が「慣例」として行なわれており、今回の秘密録音も大学組織を守るために行ったとのことだ。同大学では、大学の権威やキリスト教主義を批判しないように、授業で使われる教科書や配付される資料を事前に検閲したり、提出された学生の答案用紙を無断で抜き取って検閲したりしていた。今回の事件については、授業を秘密録音して教員を解雇した「目黒高校事件」と同様、表現の自由、学問の自由、教育の自由をめぐって、これから本裁判で争われることになる。
なお、明治学院大学は今年(15年)、教養教育センターの教員と科目の20パーセント削減を決めていた。〉
寄川氏はメディア関係者へ送ったメールに、次のような〈小論「盗聴される大学の授業」〉を付けた(要約・抜粋)。
〈相手に知られることなく無断で会話や電話を録音する「秘密録音」が社会に急速に広がっている。(中略)大学の授業も例外ではない。熱心な学生が復習のために授業を録音するのではない。休んだ学生のために録音するのでもない。そうではなく、教授が何を話しているのかをチェックするために、大学が授業を録音するのだ。
大学では、教室にこっそり忍び込んで、学生に気づかれないように授業を録音して、教員を処分するための証拠に仕立て上げる。録音資料は本人のいないところで使用し、だれが録音したのかはわからないように隠しとおす。
先生たちは、自分の授業が録音され、ほかの先生たちに聞かれているのではないかと、おびえながら授業を進めていく。教員同士の信頼関係はくずれ、そこに学生たちも巻き込まれていく。(中略)
大学の講義を盗聴しても、秘密録音しても、録音テープをかってに使用しても、何とも思わない大学教授の集団が、体制に順応し、組織を守り、規則に従い、国家に奉仕する、そうした模範的な青年を作り上げていく。標的とされるのはまずは思想系の教員で、哲学や倫理学を担当する教員が大学から排除される。空いたポストに実務経験者が学長推薦で採用され、就職のための教育を施す。実務教育に馴らされた学生たちは、飼育されて去勢され、りっぱな大人となって社会へ送り出されていく。異様な光景を見た若い先生は別の大学に移っていき、ベテランの先生はうつ病で辞めていく。こころの病で休んでいる先生は大学にも多い。
かつて、授業の盗聴をめぐって裁判があった。録音資料をもとに教員を解雇した学校は違法ではないと主張し、解雇された教員は違法だと主張した。裁判所の判決は、教員の同意なく授業を録音することは適切な手段ではなく、そのようなことをすれば、「教育の自由の空気」が失われ、「教員の授業における自由および自主性」も損なわれるから、不当な支配に当たるというものだった。
まっとうな判決だが、ことは法律の問題だけではないだろう。(中略)
いつだれがどこで自分の声を録音しているのかわからない。大学のキャンパスからは、雑談や世間話をする声が消えてしまった。教室とは盗聴とか秘密録音とかをするところではなく、安心して教員と学生が自由に議論のできる場でなければならない。〉
寄川氏の解雇理由には、彼が教科書にしていた紀川のしろ著『教養部しのろ教授の大学入門』(ナカニシヤ出版、2014年)も挙げられ、大学側は、「大学一般、明治学院大学、キリスト教主義への愚弄」などを問題にしている。
この本では、平成学院大学(仮名)での教養科目を教える教授の1年がユーモラスに描かれている。無意味な教授会、大学の教員採用人事のいい加減さ、大学紀要の実態がリアルに描かれている。本の帯には「大学で教えるためには国家資格も教員免許もいらない。大学の先生になるための採用試験もなければ、教育実習もない」などとある。あとがきには、「世間の常識は大学では通用せず、大学の常識は世間では非常識となる」とあった。受験生や保護者が、日本の大学がどういうところかを知るには最適の本だ。
名前も名乗らない明学大広報課長
東京新聞の記事では、明学大広報課は「懲戒処分は手続きに沿って適正に判断した。個別案件についてはコメントできない」としている。私は1月16日、同広報課に電話したところ、「ソメカワ」という職員が対応した。彼女は、「(寄川氏の件は)係争中の案件なのでお答えできない。個別の案件の取材には応じられないということだ」と取材を拒否した。
彼女は電話の最初に名前を名乗ったが、「大学の見解を広報課が伝えているので、私の名前、役職は言えない」と言い張った。「いまどき、広報課スタッフが氏名を言わないのは官庁にもない。課長などの管理職に代わってほしい」と私が言うと、「私が広報課長だ」と言った。そこで、広報課長の姓名を確認するため総務課に電話した。アオヤマと名のった課長は「取材なら、広報課にすべて任せる。広報課が判断したことについて何も言えない。私の氏名も言えない」と述べた。大学の総務課によると、私に対応したのは染川真由美・広報課長と青山尚史総務課長(元教務課長)だ。
寄川氏は1月24日、私の取材に次のように述べた。
「大学側がいう『その教授が録音に関わった印象を与え、名誉毀損に当たる』とする教授は、調査委員会委員長の嶋田彩司教授です。録音者は教務課職員か黒川センター長と思われるが、特定されていません。録音が確認できているのは、全15回のうちの第1回目の授業。大学側は、1回目の授業を『通常の授業』ではなく『授業ガイダンス』と呼んでいます。1回目の授業で行なわれたのは、大学の授業の運営方針(=履修者制限)への批判です。556人収容の大教室なので教職員がいても気付かず、実際、教室の中に職員らしき人がいたことがあります。教室のドアの向こう側で教務課職員がスマホを操作していたことや、教授会を教務課職員が盗聴していたこともあります」
寄川氏がこの事案を知らせた団体、組織の反応については、こう話した。
「学内の人権委員会、教授会、教員組合は取り上げない。朝日新聞と読売新聞は電話取材。東京新聞は面談取材。文科省は反応なしでした。メディアで報道したのは、私が知るかぎり、東京新聞・中日新聞だけです」
寄川氏は「言いたいことは多々あるが、代理人の弁護士と相談したところ、裁判が終わるまでは、情報は大学側にも伝わるため、できるだけ公開しないほうがよいということなので、しばらくがまんしている。裁判が終わってから、存分に表現したい」と言っている。確かに、裁判になると、どんな組織も自己防衛のために何でもやってくる。裁判に勝つことが何より大事なので、賢明な判断だと思う。
東京新聞以外の報道機関がこの事案を報道しないのはおかしい。新聞社にとって大学は重要な広告収入源などで、記事にしないのではないかと疑ってしまう。
「日本最古のミッションスクール」で盗聴
明治学院はヘボン式ローマ字で知られるジェームス・カーティス・ヘボンが1863年横浜に開いた「ヘボン塾」を起源として「キリスト教主義教育」を掲げ、教育の理念を「Do for Others」(他者への貢献)としている。
明学大の寄川氏に対する解雇攻撃と被告・明治学院の言動は常軌を逸している。弾圧された側が授業で学生に無断録音の事実を公表し、大学内外に事案を伝えるのは当然だ。解雇理由が「大学の権威とキリスト教主義を批判しているから」というのは、大学とキリスト教主義の自殺行為だろう。教員の授業を盗聴した者が処分を受けるのならわかるが、「授業を盗聴され秘密録音されたことを大学に告発した」教授が懲戒解雇されるというのは理不尽だ。
中山弘正・明学大名誉教授(元明治学院学院院長、経済学)は「大学が教員の教室で話したことを録音するなどということは、あってはならない。退職して13年もたつので、この件については何も知らないが、私がいた時には、そういうことは一度もなかった」と話している。
中山氏は1995年6月に、明治学院の戦争責任を告白した。学校法人明治学院はこの告白文を入れた『心に刻む 敗戦50年・明治学院の自己検証』を発行、その冒頭にこう書いている。
〈日本国の敗戦50周年に当たり、明治学院が先の戦争に加担したことの罪を、主よ、何よりもあなたの前に告白し、同時に、朝鮮・中国をはじめ諸外国の人々のまえに謝罪します。また、そのことを、戦後公にしてこなかったことの責任をもあわせて告白し、謝罪します。〉
また、この告白文には、戦時中に国策に協力した「日本基督教団」の〈「統理」冨田満牧師は自らも伊勢神宮を参拝したり、朝鮮のキリスト者を平壌神社に参拝させたりしました(1938年)〉という指摘や、〈1939年、明治学院学院長に就任した矢野貫城氏は、宮城遥拝、靖国神社参拝、御真影の奉戴等々に大変積極的に取り組みました〉という記述があった。最後に告白は、海外に軍隊を派遣し始め、「殉国」の思想が現代的装いをもって、じわじわと日本社会のなかに浸透していると指摘し、この邪悪なる時代に対処する力を備えるよう訴えている。
明学大がいまやるべきは、教員の「監視」ではなく、戦前を取り戻そうとする邪悪な安倍政治への批判ではないか。
「御用組合」は不適切用語と非難した同志社大学
寄川氏の事案と、同志社大学(水谷誠理事長)が私を不当解雇した手口には共通点が多い。同大も「キリスト教主義教育」を掲げている。
私は22年間、共同通信に勤めたあと、1994年から同大の大学院と学部でジャーナリズム論を教えた。14年3月末の「定年不延長」(同大では65歳が定年だが、大学院教授は70歳まで定年が1年ごと自動的に延長される)をめぐり、京都地裁において裁判中だ。
私の場合は大学執行部との紛争ではなく、大学院社会学研究科メディア学専攻・社会学部メディア学科の同僚教員6人(渡辺武達名誉教授、小黒純・竹内長武・佐伯順子・池田謙一各大学院教授、河崎吉紀・学部准教授)と冨田安信社会学研究科長・社会学部長(当時。産業関係学教授)が共謀した闇討ちだった。この7人を背後で支えたのが、対米隷従で安倍首相に近い村田晃嗣学長(15年11月の学長選挙で敗北、現在法学部教授)らだ。
小黒氏らは13年8月から地位裁判の代理人弁護士らと相談しながら私の追放作戦を進めた。小黒・竹内・佐伯・池田各氏は13年10月30日の社会学研究科委員会で私が退席したあと、私を"不良教授"と非難した「浅野教授 定年延長 審議資料」と題した怪文書を配布した。怪文書は、私が学生向けの講義要項に、〈大学院教授としての品位にかける表現 例「ペンとカメラを持った米国工作員」「労務屋」「企業メディア"用心棒"学者」「デマ」など〉の〈不適切用語〉を使ったと非難した。
私は地位確認裁判とは別に、この4人と黒幕の渡辺氏を相手取って、京都地裁に名誉毀損・損害賠償訴訟を提起した。この「怪文書」5人裁判の証人尋問が1月12日に京都地裁で開かれ、原告の私と渡辺・小黒両氏が証言した。渡辺氏は「(浅野の定年延長について)全く関心がなく、何も関与していない」と証言した。
小黒教授は主尋問では、私に対するヘイトスピーチをなめらかに述べたが、原告側弁護士による反対尋問では、人が変わったように言葉を見つけるのに必死だった。「博士後期課程の教授でないあなたに、浅野教授の業績を云々する資格があるのか」という質問には、「謙虚に答えなければなりませんが、……あると思う、ということにしておきましょう」と答えた。学生に労務を強制したという陳述書(16年12月20日=地位裁判結審の日に提出)の記載について、「何人の学生から聞いたのか」という問いには、「覚えていない」などと答えた。
小黒氏は「(原告の支援者で)タドコロと名乗る人物が、私に対し『あなたは人の首を切って平気なんですね』と脅迫した。何らかの危害が加わられるのではないかと、恐怖にさらされ怖かった」「原告は、多数の学生を引き連れて佐伯教授を取り囲んだ」などと証言をしたが、ウソである。また「原告が職場にいることで教員は常時強いストレスにさらされ、長く続く恐怖感によって突発性難聴などを発症した。私は帯状疱疹に罹った」とも証言した。私が「菌」だというのだ。裁判は4月13日の次回期日で結審する。
大学教授の地位は国会議員、法曹人、ジャーナリストなどと同様、簡単に剥奪されてはならない。私の恩師である白井厚・慶應義塾大学経済学部名誉教授(社会思想史)は14年1月の同大での「ドイツ古典哲学の教えるところによると、大学の教授というのは全面的な自由を持ってなければならないということだ。それは自由な発言をすることによって、優れた教授の優れた研究が生まれるからである」と話している。
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October 13, 2017, 11:38 pm
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朝日新聞(2017年10月13日)
名古屋芸術大学(愛知県北名古屋市)を運営する学校法人名古屋自由学院が9月、教職員組合の委員長と副委員長の教授2人に自宅待機命令を出し、教職員組合が「明確な理由がなく不当だ」と命令の撤回を求めていることがわかった。朝日新聞の取材に、法人の纐纈(こうけつ)正伸人事課長は「現在、審議中。それ以上申し上げられない」と答えている。
組合関係者によると、9月22日、法人の川村大介理事長名で40日の自宅待機を命ずるメールが2人に届いた。後日、同じ内容の書面も郵送で届いた。理由として「職員の行為が懲戒に該当する。またはそのおそれがある」「職員が出勤することにより、正常な業務の遂行に支障をきたす。または他の職員に与える影響が大きい」などと記載されていた。組合が具体的な理由を問い合わせたが「個別の案件には回答しない」と書かれた文書が届いたという。
一方、組合関係者によると、待機命令が出る前の9月7日、組合は「(法人の)理事会が評議会を廃止し、教授会規程を改正した」などとして、大学へ指導するよう文部科学省に陳情していた。組合の代理人の小島高志弁護士は「教育現場では労使が協力し合って、学習、学問、研究の環境を発展させるべきだ。一部の教職員や労組を敵視して大学を運営することは、学生の不利益につながり、教育機関に対する社会的要請にも反する」と話す。
ログイン前の続きこの法人と組合は過去にも労働条件を巡って対立があり、愛知県労働委員会が2014年と16年にそれぞれあっせん案を示したほか、今年1月には組合が申し立てた不当労働行為の救済をめぐり、和解した経緯がある。
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〈労働法に詳しい大阪市立大の西谷敏(さとし)名誉教授の話〉 具体的な理由なく自宅待機を命じ、一定期間であれ教授らの講義、研究の権利を制限するのは不当で、命令は無効だ。自宅待機命令の背景に組合活動があるとすれば、労働組合法にも抵触する。
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February 4, 2018, 6:21 am
■読売新聞(2018年1月30日)
祝 勝訴!
常葉大学短大部元准教授「解雇無効」確定
上告棄却 常葉 未払い給与等支払いも
常葉大学短大部の准教授だった男性(44)が、運営する常葉学園の理事長や職員らを刑事告訴したのち、懲戒処分を受けたのは不当だとして学園側に地位の確認と損害賠償を求めた訴訟で、最高裁判所は双方の上告を棄却した。解雇の無効を認め、未払い賃金約1400万円の支払いを命じた東京高裁の判決が確定した。決定は19日付。
判決などによると、男性は2012年8月、常葉学園が補助金を不正受給していると告発するのをやめるよう強要されたとして、理事長ら3名を静岡地検に告訴した。地検は13年1月に3人を不起訴処分とし、男性はその後15年2月常葉学園から懲戒解雇処分された。
男性は29日「判決は確定したが、学園側から連絡はなく、未払い給与もまだ支払われていない。早く短大に復職し研究を続けたい」と話した。
常葉大学側は、読売新聞の取材に対し「解雇処分が認められなかったのは「極めて残念」。判決に従って適切に対処していく」とコメントした。
常葉学園の教員 解雇無効が確定
最高裁上告不受理
■朝日新聞(2018年1月30日)
補助金の不正受給を内部告発し学校法人常葉学園に解雇されたとして、同学園の男性教員が職員としての地位保全を求めた訴訟で、最高裁判所は双方の上告を不受理とする決定を出した。19日付。29日に会見した男性の弁護士らが明らかにした。
懲戒解雇は無効とする高裁判決が確定した。男性は2012年、学園の補助金不正受給について内部調査していた際、学園から通報しないように強要被害を受けたとして理事長らを静岡地検に刑事告訴、理事長らは不起訴処分になった。その後男性は、不正受給を内部告発。問題が報道されるなどした直後の15年、懲戒解雇が通知され、男性は無効を求めて提訴した。昨年7月、東京高裁は解雇は無効とする静岡地裁の1審判決を維持。原告と被告の双方が上告したが最高裁は不受理を決定した。
学校法人常葉大学は「判決を前提に今後適切に対応していく」と述べた。
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February 4, 2018, 7:20 am
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February 8, 2018, 7:41 pm
■静岡新聞(2018年2月3日)
非常勤無期雇用化啓発指導を申し入れ
静岡大学教職員組合と、静岡県労働組合評議会は2日、同大が非常勤職員の無期雇用化について定めた条件が、有期契約労働者の雇用安定化を図った改正労働契約法の趣旨にそぐわないとして、静岡労働局に啓発指導を申し入れた。
同大教職員組合によると、2013年4月に同法が施行され、有期契約労働者が同じ職場で通算5年を超えて働いた場合、本人が希望すれば無期雇用に転換できることが定められた。一方同大は17年3月に非常勤職員の労働条件に関する基準を改正し、無期雇用化の条件に「専門的資格等が必要」との規定を加えた。資格の例として調理師免許や秘書検定などをあげている。同組合は、「非常勤職員は事務職員や教員が中心。大学側から合理的な基準だという納得できる説明がない」としている。
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February 9, 2018, 11:18 pm
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学長宛「質問状」
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別紙
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関連資料1
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関連資料2
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関連資料3
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当該問題の新聞記事1
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当該問題の新聞記事2
平成30年2月8日
富山大学長
遠 藤 俊 郎 殿
経 済 学 部 教 授 会
質問状(平成30年2月8日)
平成30年1月25日付で経済学部長宛に依頼がありました「経済学部長候補者の推薦について(依頼)」に関して,1月31日に開催された経済学部臨時教授会にて数多くの疑問点が出されました.つきましては下記の疑問点についてご回答いただきたく,お願い申し上げます.
なお,疑問点の内容については詳細を別紙(2枚目以降)に記載しましたので,別紙の記載内容に対応する形で個々具体的にご回答ください.
記
1 依頼文書の趣旨
富山大学学部長候補者選考規則第2条第5項に基づき,再度学部長候補者2人の推薦を依頼する旨,記載がありましたが,その趣旨について.
2 根拠規定
今回,依頼があった再推薦は,「富山大学学部長選考規則」や「学部長等の選考プロセスについて」に沿ったものであるかどうかについて.
3 判断の具体的理由(1)
経済学部教授会より推薦した2名の候補者のうち,1名が「適任でない」とされた具体的な理由と根拠について.
4 判断の具体的理由(2)
経済学部教授会が推薦した候補者2名のうち,「適任であるとまでは判断できない」とされた1名につき,「適任であるとまでは判断できない」という表現の意味およびそこに至った具体的な理由と根拠について.
経済学部教授会は,学部長候補者推薦にあたって,選出方法や選挙の実施手順等について検討を重ね,構成員の意思を適切に反映するとともに,公正かつ厳正な過程を経た候補者の選出に取り組んできました.それだけに,「富山大学学部長選考規則」や「学部長等の選考プロセスについて」とは相容れないように思われる今回の再推薦依頼は極めて遺憾であります.丁寧かつ誠実な説明と回答を求めます.
以上
別紙
1 1月25日付け経済学部長宛て文書(以下、「通知書」という。)の文意について
(1)通知書には、福井候補につき、「学部長として適任であるとまでは判断できませんでした」と記されている。この記述を文面どおりに読むなら、福井候補について、少なくとも「適任でない」(学部長選考規則2条5項)とは判断していないことになり、判断保留(最終決定に至っていない)の意と解することもできる。いずれにせよ、通知書のこの部分の記述からは、経済学部教授会が推薦した候補者2人のうち、1人は依然として学部長候補者たる地位を失っていないと解するほかないが、他方で通知書は、「2人」の再推薦を求めるとしている。通知書のかような記述の趣旨を説明されたい。
(2)上記(1)の点に関して、学長は、1月19日及び同25日に経済学部長を訪ね、同学部長に対して、「堂谷候補が不適任(不適格?)であるため、複数の候補者の中から選考することができない状態になった。ついては、3人目の推薦を求める。」旨、述べている。また、25日には、「福井候補については候補者として残してよい」旨の発言も行なっている。学長からかかる発言ないしは要求があったことについては、31日に開催された臨時教授会において学部長から報告・説明がなされたところである。この発言の趣旨と、上記(1)の通知書の文意との関係、整合性(同じかどうか)を説明されたい。
付言すると、教授会が推薦した複数の候補者の中から選ぶという現行制度の前提が満たされなくなった云々との上記発言は、2人のうちの1人を「学部長候補者」として不適格(失格、選考対象外)と判断したため、という趣旨のようにも聞こえる。しかし、学部長選考規則(以下、「選考規則」という。)上、教授会が推薦した学部長候補者について、学長が「学部長候補者として」「適格か、不適格か」という判断をする権限や手続きは存在しない。選考規則上学長に認められているのは、教授会が推薦した候補者について、「学部長として」「適任か、適任でないか」を判断する権限のみである。学長の上記発言が、通知書の文言どおり、堂谷候補は「学部長として」「適任でない」という趣旨であるならば、候補者が1人になったのは、正に福井・堂谷という複数の候補者について選考し、適任かどうかを判断した結果にほかならず、堂谷候補が外れたことを以て「複数の候補者から選考することができなくなった」とする学長の上記発言は矛盾しているというほかない。
2 選考規則の解釈・適用について
通知書は、「2人」の再推薦を求める学内規則上の根拠として、選考規則2条5項を挙げている。しかし、文面上明らかなように、同項は、学部教授会が推薦した候補者(2人又は3人)が「学部長として適任でないと判断した場合」に関する規定である。選考の結果、「候補者が1人だけになった」とか、「候補者が適任かどうか判断しがたい」といった理由で学長が教授会に候補者の追加ないしは再推薦を求めることは認められていない。すなわち同項は、選考の結果、学部教授会が推薦した候補者が全員不適任(適任者が誰もいない)と判断した場合に再推薦を求めることを定めたものであり、ある候補者について適任でないと判断したとしても、不適任ではない候補者がほかにいるのであれば、学長には、その候補者を学部長に選ぶ以外の選択肢は認められていない。この趣旨は、現行の学部長選考手続きへの選考規則の改正を審議し了承した平成27年3月19日の教育研究評議会においても確認されている。
選考規則2条5項に関する如上の文理解釈および立法趣旨からすると、通知書記載の事由が、同項を適用することができる場合に該当しないことは明白である。上述のとおり、通知書には、福井候補を「学部長として適任でないと判断した」とは記されていない。そうとすれば、2条5項が定める再推薦要求を行なうための要件は満たされておらず、福井候補を学部長に指名する以外の選択肢はないということになる。
また、選考規則以外の学内規則にも、学長にそのような権限を認める規定は見当たらず、学長の要求には学内規則上の根拠が存在しない。
以上のとおりであるから、学長の再推薦要求には根拠規定が無く、再推薦要求は無効であると判断せざるを得ない。
この点について、見解を明らかにされたい。
3「判断」の理由、根拠等について
(1) 選考規則2条5項が定める学長の「判断」は、<学部長候補者たる地位(換言すれば、学部長に任命されうる地位)>という個人の法的利益に関わる判断(決定)であり、裁判上の地位確認訴訟の対象となりうるものである。この学長の「判断」は、学部長として「適任でない」という不利益決定であるから、明文規定の有無にかかわらず、法理上、理由や根拠を具体的に明らかにすることが必要である。そしてもし理由や根拠が合理性を欠いていたり、判断に至る手続きに重大な瑕疵があったりすると、その判断は誤りだということになる。
しかるに「判断」の理由に関する通知書の記述は、以下のとおり極めて簡略、曖昧であり、判断の理由や根拠が明確に示されているとは到底言えない。また判断の理由や根拠には、明らかに不合理と考えざるを得ない点がある。
以上のことを踏まえた上で、以下に指摘したひとつひとつの点に対して回答を求める。
①堂谷候補については、「不適任」と判断した理由として、「所信を確認する限り、経済学部長の選考の基準を満たしておらず適任ではないと判断」したと記されているのみであり、所信がいかなる点・いかなる意味において「選考の基準を満たしていない」(ママ)のか、3つの選考基準(以下、「基準」という。)それぞれの観点から所信をどのように評価したのかについての具体的な説明がない。「基準を満たしていない」とは、所信の形式・体裁のことなのか、実質・内容のことなのかも不分明である。
仮に、形式・体裁、すなわち所信の文章の記述の仕方が選考基準に沿っていないことを指しているのだとすると、そうした形式的な理由だけで直ちに「不適任」と判断するのは、上述の候補者の法的利益に関する権限行使の在り方として不適切であり、当該判断は、重大な手続き的瑕疵につき違法・無効と言わざるを得ない。適正手続きの観点からは、まずは所信の書き直し・再提出を求めるのが適切な対応である。また、所信のみを判断材料とせず、面接を実施したうえで判断することも検討すべきであり、面接不要とするならば、相応の理由を示すべきである。以上の手順で選考を行った上で、学長は、判断の理由・根拠を具体的に明らかにする義務を負う。
他方、「基準を満たしていない」のが所信の内容面のことであるのならば、所信記述内容のどのような点を以て基準を満たしていないというのか(逆に言えば、どのような記述内容であれば満たしていることになるのか)を、3つの基準に即して具体的に示さなければならない。
② 福井候補については、「適任であるとまでは判断でき」なかった理由として、「在職期間内に学部改革及び大学院改革を進めるという点に関して、経済学部長の選考の基準第3項を満たしていることが確認でき」なかったとだけ書かれている。他の2つの基準に関して福井候補がどのような評価であったのかについては全く説明が無い。そして、「基準第3項を満たしていると確認でき」なかったとする理由は、専ら「在職期間」、すなわち、学部長として在職可能な期間が定年までの2年間であることに求められており、この点が、結果として「適任であるとまでは判断できなかった」唯一かつ決定的な理由とされている(学長も、同趣旨の発言を学部長および福井候補に対して行っている)。
しかし、以下の理由から、かかる説明は到底是認できるものではない。
第1に、適任とまでは判断できないという「判断」は、選考規則上認められておらず、同規則2条5項の定める、学長が再推薦を要求するための要件にも該当しない。(上述)。
第2に、在職可能な期間が2年間であることを以て、改革を「進める」(完成する、ではなく)ことができないかのような捉え方になぜなるのか、その点の説明が無い。在職期間が2年間であるからといって、改革を「進める」ことができないとは常識的に考えられない。学部長に関してそのような理屈が通るのであれば、在職期間が残り1年だけとなった学長に関してはなおのこと同じことが言えるということになるはずである。
第3に、定年までの期間という動かしようのない形式的条件を持ち出して、基準第3項を満たしているかいないかの決定的な判断材料とするということは、最低2期4年以上の在職が可能であることが、初めから教授会が学部長候補者を選出・推薦する際の要件(正しく、選考する以前の、候補者としての適格性、資格要件)、あるいは少なくとも考慮すべき重要事項だと言っているに等しい。これはすなわち、選考規則や、学部長の推薦に関する各学部の規則に存在しないルールを、学長の一存によって事後的に、新たに付け加えたのと同じである。このような越権行為、権限の濫用が許されないことは当然の理である。
第4に、実際的な観点からも、定年までの期間という形式的な事柄を、「基準」の充足如何や、学部長として適任かどうかを判断する決定的な材料とすることに合理性があるとは言い難い。各学部におけるこれまでの候補者推薦の結果をみても、学識、見識、経験、人望といった要素の方が、学部長の職責(改革を「進める」ことも含まれる)を担う上で重要だというのが多くの教員の認識であることは明らかである。
(2)選考の「基準」およびそれに基づく「判断」という制度にも問題がある。
学長が示した選考基準自体が抽象的かつ曖昧であり、それゆえ基準に対する所信の記述も、基準の充足如何の評価も、多分に主観的なものにならざるをえない。そうした抽象的で曖昧な選考基準とそれに対する「所信」によって判断しようとすれば、恣意的な判断、権限行使を許すことになりかねない。
このような恣意的判断、恣意的な権限行使がなされることのないようにするには、選考基準に対する「所信」の評価は参考程度の扱いとして、それに依拠した「判断」は極力避けることとし、教授会の客観的な意志、すなわち教授会が推薦した候補者の順位や得票数を尊重する(再優先の判断基準とする)ことを大原則とする以外にない。かかる恣意的判断や権限濫用防止の観点からの選考規則の解釈・運用の在り方について、前出平成27年3月評議会において学長が行なった発言をも踏まえつつ、見解を示されたい。
4 再推薦要求による学部業務への影響
実際上の問題として、如上の曖昧かつ根拠不明の再推薦要求が、学部の業務に対して深刻な影響を発生させていることも看過できない。学長が候補者の再推薦を要求したことによって、既に経済学部では、次年度からの各種役職者の決定に大きな遅れが生じている。仮に再推薦をするとした場合、経済学部は厳格な候補者推薦手続きを定めており、手続きに時間を要するから、なおのこと他の人事の決定に大きな遅れが出ることになる。また、年度末のこの時期は、入試業務、卒論指導、卒業判定等のために、教員も事務職員も1年のうちで最も重要かつ多忙な時期であることは周知のとおりであり、再推薦の手続きを実施することは、ただでさえ多忙な教員及び事務職員に対して過大な負担を強いることになることは明らかである。
そのような時期に曖昧かつ根拠不明の再推薦要求を安易に出したことの適否、そこから生じる影響に対する責任をどのようにお考えか、説明を求める。
以上
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February 12, 2018, 7:53 am
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February 21, 2018, 6:34 am
■静岡大学の職組ニュース,第5号(2018年新年号)
「懲戒解雇処分の不当性」
最高裁判所の判断にて勝ち取りました
例えば、ある役職で補助金の不正取得の書類作成を強いられた時、皆さんはどうしますか?そして協力を拒否した後に、陰湿な脅し等のパワハラを受けるようになったらどうしますか?決して他人ごとではない誰もが経験するかもしれないケ スですが、教育研究にかかわるものとしてそういう現実と折り合って行くのは簡単なことでしょうか? 常葉学園のM先生は、補助金の不正行為に目をつぶることができず、そしてパワハラ等が内部告発阻止のために組織的に行われていると認識し大学側を訴えました。それは異常な行動でしょうか?常葉学園は大学を訴えたことをもってM先生が「学園の秩序を乱し、学園の名誉又は信用を害したとき」として懲戒解雇処分を行いましたが、それは大学の組織運営における当然の権利なのでしょうか?
本年1月19日に最高裁判所は 、M先生に対する常葉学園の懲戒解雇処分が「解雇権の濫用であり無効である」との静岡地裁から東京高裁へと引き継がれた判決を維持する決定を下しましだ。2015年3月末の懲戒解雇処分以来、2016年1月の静岡地裁での地位保全を認める勝訴、2017年7月での静岡地裁判決を維持する東京高裁決定に続き、最高裁においても懲戒解雇は不当であるとの判断が下されたことでM先生の労働契約上の地位は最終的に確定することになりました。2015年12月にM先生から支援の訴えが私たち静岡大学教職員組合に寄せられたことをきっかけに、静岡県立大学と静岡英和学院大学の各教職員組合が国立 ・公立・私立の枠を超えて共同での支援が行われて来ましたが、ここに勝訴が最終的に確定したことに安堵し喜ぶとともに、皆様方の支援協力により感謝申し上げる次第です。
今回の裁判の発舗は、常葉学園の補朗金不正取得に対するM先生の良心に基づく行動でした。公益通報に至るM先生の行動に対して様々な脅迫まがいの言動やパワハラが行われました。その行為に対して常葉学園を強要罪で訴えた訳ですが、脅迫・パワハラ行為が公益通報阻止を目的として行われたという証拠が不十分として不起訴となりました。これ が根拠の乏しい訴えで学園の名誉を傷つけたとして懲戒解雇事由とされたわけですが、裁判では 「本件懲戒解雇は、懲戒権の濫用であり、本件刑事告訴をその理由とするも、実質的には公益通報に対する報復措置である可能性がT否定できない」 と認めています。なぜならM先生の懲戒処分の検討は、刑事告訴の後ではなく、公益通報の直後に始まり、そのために必要な懲戒規定も事後的に作成されたからです。
もちろん裁判においてそれぞれの主張があり、その主張が認められる揚合もあればそうでない場合もあります。そういう経緯はともかく最高裁という司法の最終的判断が下された揚合は、それを真摯に実行するのは最低限の責務と言えます。しかし今回の最高裁決定が下された後ち、常葉学園側はM先生の職場復帰に向けた行動を伺ら起こしていません。教育研究者として不正行為への協力を拒否し゛、良心に基づいて訴えたことを持って,組織への裏切り者の熔印を押して罰し続ける学園側の行動は異常であり、最高裁の決定も無視し続ける姿勢は教育機関の資格がないと言わざるを得ませ ん。
1月29日に県庁記者クラブで弁護団西ヶ谷弁護士と支援教職員組合で共同記者会見を開催し、M先生の教育研究者としての職場復帰の速やかな実行を訴えました。地位保全は当然M先生の教育条件の回復を伴ったものでなければなりません。折しも、常葉大学も草薙キャンパスオープンで新たなスタートを切ろうとしていますが,常葉大学も本年4月以降M先生の教育研究者としての権利保証の具体的措置を取ることで過去の負の遺産を清算することが求められていると思います。良心と信念を貫いたM先生こそ教育者として大学の財産となるのではないでしょうか。最終的な解決まで皆様のご協力支援を引き続き心から訴えさせて頂きます。
(過半数代表者:前教職員組合委員長 鳥畑与一)
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February 21, 2018, 6:49 am
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『アクセスジャーナル』(2018年2月20日)
「いじめ対策せず」元高校女生徒に続き―大学でも「盗聴」に抗議する教授を懲戒解雇し提訴されていた「明治学院」
山岡俊介
「明治学院」(東京都港区)といえば、ヘボン式ローマ字で知られるアメリカ人宣教師ヘボン博士夫妻が開いた私塾が源流。150年以上の歴史を誇り、わが国最古のミッションスクール。
そんな博愛精神を説く由緒正しい学校法人傘下の「明治学院東村山高等学校」(東京都東村山市)の女生徒(当時)が、いじめに会っていると訴えたにも拘わらずキチンと対策をしてくれなかったとして校長を相手取り、提訴したことは以前、本紙でお伝えしたが、同じく傘下の「明治学院大学」(東京都港区)でも、懲戒解雇された教授が、地位確認と約1372万円の慰謝料を求めて提訴していたことはわかったので報じる。
この訴訟、大学側が教授の授業中に無断で教室に立ち入り"秘密録音"した内容を根拠に懲戒解雇しており、「大学自治」「学問の自由」「信教の自由」にも関わる重大な点が問われているのだが、なぜか大手マスコミではまったくというほど報じられていない。
もっとも、すでに16年12月に提訴され、今年1月25日には証人尋問が行われ、いよいよ一審判決が迫っている。
原告は愛知大学法学部教授を経て、10年4月から明治学院大学へ移籍、教養教育センターの教授として16年9月まで、教養科目の「倫理学」を教えていた寄川条路氏(56)。
訴状などによれば、被告が懲戒の最大の理由にあげたのは、授業の無断録音の事実を知った原告が誰が録音したか、またその録音を聞かせて欲しいと要求したが拒否されたことから、止む無く授業で配るレポート用紙の欄外に情報提供を求める書き込みをした点。
また、原告の授業は生徒に大人気だったところ、学校側が一方的に300名に履修制限したことから、その是非と理由を問う質問を、生徒向けの授業評価アンケートの質問内容に加えたこと。それから、授業で用いた原告の著書のなかに、キリスト教主義に批判的な内容が一部含まれていたことも懲戒理由としてあげられている。
読者のなかには、原告が政治的発言を行う者だったからではないかと推測する方もいるかも知れないが、原告はそんなことはなく、上記のような行為をしたに過ぎない。
ところが、被告側は授業の盗聴は今回に限らず、以前から大学組織を守るために「慣例」として認められていると、「違法行為」と抗議する原告に言い放っていたという。
そして、盗聴に限らず、以前から大学の権威やキリスト教主義を批判しないように、授業で使う教科書を検閲したり、教材を事前に検閲し配布禁止にしたりしていた。また、原告に限らず、以前にも些細と思われる理由で懲戒解雇された事例があるそうだ。
横に、会員制情報誌『ベルダ』に寄稿した慶應大名誉教授で弁護士の小林節氏の記事(17年10月号)を転載しておいたが、同氏もいうように、教授は大学と契約した授業に関して自由に研究や発言する「学問の自由」(憲法23条)が保障されている。そして、教授の使う教科書を「検閲」するのも、まして「盗聴」など論外というか「違法行為」のはずだ。
実際、16年10月、寄川氏が労働審判の申し立てを東京地裁に行なったところ、同年12月、解雇は無効として地裁は寄川氏を復職させるように明治学院を説得。ところが拒否したことから本訴訟に移行している。
かつては東大ポポロ事件のように、大学構内に警官を入れることさえ大学の「学問の自由」と「自治」を犯すとして大問題になったのに、いつしか警官導入は当たり前に。本来、大学側の「盗聴」行為と聞けば大学内外から大きな批判の声が起きて当然とも思うのだがそれもなく、報道もなく、原告がほとんど孤立している状況は世も末というべき。
遅ればせながら、今後の判決など注視したい。
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February 23, 2018, 7:22 pm
■しんぶん赤旗(2018年2月24日)
山形大学が労働組合との合意をほごにして非常勤教職員を5年で雇い止めにしようとしている問題で、東北非正規教職員組合と首都圏大学非常勤講師組合の有志2人は23日、同大学が労働者過半数代表選挙から非常勤を排除するという労働基準法違反の状態で、5年雇い止めの就業規則を作成したと山形労働基準監督署に刑事告発しました。
文部科学省に対しては、山形大の労基法違反で残業を取り決めた三六協定も無効となり、25日の2次試験前期日程が適正に執行できないことを指摘。文科省の責任で受験生の権利・利益を守るよう要請しました。
山形大は4月から始まる有期雇用労働者の無期雇用転換の対象を、国立大学運営費交付金で雇用している非常勤教職員に限定し、外部資金(プロジェクト型予算)で雇用されている人たちは一律で5年雇い止めにしようとしていました。
昨年11月10日の両組合との団体交渉で、大学当局は「違法な雇い止めは行わない」「阻合を通じて申し入れた場合、誠実に協議し、解決をめざす」と、雇い止め撤回を含めた協議をすると合意したため、組合側は刑事告発を留保していました。
告発状などによると、その後、大学側は「就業頬則に反する対応はできない」と合意を無視する態度をとり、5年を超える雇用更新を求める非常勤教職員の申し出を拒否しています。
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February 24, 2018, 6:04 pm
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京都新聞(2018年02月15日)
学校法人立命館が非常勤講師と5年を超えて契約の更新を行わないとした就業規則は、労働者過半数の代表の意見を聴かずに定められ違法だとして、立命館大の非常勤講師らは15日、吉田美喜夫総長と森島朋三理事長を16日にも京都上労働基準監督署に刑事告発する、と発表した。
告発するのは、労働組合「ユニオンぼちぼち」の執行委員を務める立命大非常勤講師の藤田悟さん(39)ら3人。
労働基準法は、就業規則を変更する場合、労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならないと定めている。同組合は、非常勤講師の最長5年での雇い止めを記した就業規則に変更した2015年当時の代表者は、選挙の投票率が低く過半数の代表者とは見なせない、としている。
13年の労働契約法改正によって今年4月以降は、5年を超えて契約を更新している有期雇用労働者は無期雇用への転換を求めることができる。各大学で5年の更新上限を設ける動きがあったが、反対の声を受けて早稲田大や東京大は5年ルールを撤回した。藤田さんは「全国の大学が次々と5年雇い止めを撤回する中、立命館は就業規則を変更してそれを維持している。規則そのものを撤回すべきだ」と訴えている。
京都上労基署は過半数の代表の選出などについて立命館に対し是正勧告を行っているが、立命館は「就業規則がただちに無効になるとは考えていない」としている。
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February 24, 2018, 6:04 pm
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NHK山形News Web(2018年2月23日)
山形大学が就業規則を変更する際に一部の非正規職員を参加させずに職員の代表者と手続きを進めたのは労働基準法に違反しているとして労働組合の関係者が23日、山形労働基準監督署に告発しました。
告発したのは東北地方の大学などの非正規の教職員でつくる労働組合の関係者です。
労働基準法では就業規則を変更する際に労働者の過半数の代表者から意見を聴くよう定めていますが、告発状によりますと、山形大学では一部の非正規職員を参加させずに代表者が選ばれ、就業規則を変更したとして、労働基準法に違反していると主張しています。
このため組合では、一部の非正規職員が5年を超えて契約することはできないと定められている就業規則も無効だとして、大学に対してこれらの非正規職員の雇い止めをやめるよう求めています。
今回の告発について、山形大学の矢作清総務部長は、「内容を承知していないのでコメントすることはない」とした上で、「就業規則の変更について、労働者の代表を選ぶ際に、非常勤講師などが含まれていなかったのは事実で、今後、選び方の見直しも含めて検討したい」としています。
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February 24, 2018, 6:05 pm
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厚生労働省記者会(2018 年2月26日)
日本大学を労働基準法 90 条違反により刑事告発・申告
~非民主的な過半数代表選挙
に基づく非常勤講師の就業規則制定は無効~
内容 2 月14 日(水)、東京大学教職員組合委員長佐々木弾、首都圏大学非常勤講師組合委員長松村比奈子、同首都圏大学非常勤講師組合副委員長大野英士の三名は、連名で、日本大学を労働基準法 90条違反(労働基準法第120 条第1 号、同法第90 条第1 項及び同法第121 条第1 項に該当)として、東京中央労働基準監督署に刑事告発しました。また 26 日までに、当事者が同労働基準監督署に出向き、申告をします。その内容を 26 日の記者会見で公表し、これまでに入手した情報と概要を説明いたします。
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February 28, 2018, 12:06 am
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しんぶん赤旗(2018年2月27日)
日大の「雇い止め」 労基法違反で申告
労組が会見 非常勤講師の2人
日本大学(本部・東京都千代田区)が非常勤講師を契約上限5年で雇い止めとする就業規則などをつくる際、正当な労働者過半数代表の意見聴取を行わなかったとして、日大に勤める非常勤講師2人は26日、渋谷労働基準監督署に労働基準法違反を申告しました。同日、厚生労働省内で会見しました。
申告した井上悦男、眞砂(まなご)久晃両氏=首都圏大学非常勤講師組合組合員=は、日大三軒茶屋キャンパス(世田谷区)などで英語を教えています。
日大では、労働者代表を選出するにあたって、複数人の立候補者がいる場合は、あらかじめ1人にしぼったうえで、通常の信任投票ではなく、不信任投票を行っています。組合側は、民主的な手続きではないと批判しています。
首都圏大学非常勤講師組合の松村比奈子委員長は、「日大は労働契約法の無期転換ルールを逃れるため、大量の雇い止め通告を行っており、認めるわけにはいかない」と強調しました。
井上氏は、「日大は、三軒茶屋キャンパスの新設学部で最低4年は授業を担当するよう義務づけながら、2年で英語担当の非常勤講師全員に雇い止めを通告している。契約違反だ」と訴えました。
日大の労働者代表不正については、松村委員長ら非常勤講師組合有志3人が14日に刑事告発も行っています。
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朝日新聞(2018年3月2日)
私立大学の教授らが解雇を巡り、大学側と訴訟などで対立するケースが相次いでいる。教職員組合によると、2014年に学長権限を強めた改正学校教育法が成立した後に目立つようになったという。
名古屋芸術大(愛知県北名古屋市)を懲戒解雇された元教授2人は17年12月、解雇無効などを求めて提訴した。元教授は大学を運営する学校法人名古屋自由学院の教職員組合の正副委員長だ。
訴状によると、元教授は17年10月、教職員用メールボックスに組合ニュースを投函(とうかん)したところ、就業時間内に組合活動をしたなどとして処分されたと主張している。元教授は「組合活動などを理由に解雇されたのは不当。大学内での自由な言論、表現活動、妥当な協議が非常に困難になっていることの象徴だ」と訴える。2月19日に第1回口頭弁論があり、学院側は請求棄却を求めた。取材に対しては、「訴訟継続中のためコメントできない」と文書で回答した。
全国162の私立大の教職員組合が加盟する日本私立大学教職員組合連合によると、17年は少なくとも北海道や千葉県など計15大学で教職員の解雇をめぐる訴訟や不当労働行為の救済申し立てなどがあった。私大教連の担当者は「改正学校教育法が成立してから増えた」と話す。
法改正は、グローバル競争力の強化など大学改革を進めやすくすることを目的に学長の権限を強めるのが狙い。14年8月には、文部科学省が「学長のリーダーシップの下で、戦略的に大学を運営できるガバナンス体制を構築することが重要」と全国の大学に通知した。
私立大では、私立学校法で最終的な意思決定機関とされる理事会の権限が強まった。学長選の廃止や、教授会の審議なしでカリキュラムや学部を再編する動きが広がっている。
こうした中、運営をめぐって、大学側と教員側の対立が目立つようになった。
追手門学院大(大阪府茨木市)は、改正学校教育法の成立前から改革を進めてきた。13年に教授会規程を改定し、審議事項から教員人事や重要事項を除外。学長は理事会選任とし、教職員による投票を廃止した。
こうした動きに対し、「大学の民主的な運営を阻害する」と、教授会などで批判してきた元教授2人が、15年10月に懲戒解雇された。卒業生が在学中に所属した部の顧問からセクハラを受けたとして11年に起こした訴訟を、元教授が企てたというのが処分理由だという。懲戒処分説明書には「学院を被告とする訴訟の提起を教唆し、あえて記者会見を画策し、学院の名誉及び信用を毀損(きそん)した」と記されている。
元教授は追手門学院大を運営する学校法人に、解雇無効などを求めて係争中だ。元教授は「解雇の真の理由は、大学の自主性、自立性を守り、大学の民主的運営に力を尽くそうとする原告らが目障りで排除しようとした」と主張する。
大学側は取材に対し、「ガバナンス改革の目的は教育力の向上にある。すべては学生のため」と反論。処分については、「係争中の案件で主張は裁判で明らかにしていく」とした。
中京大(名古屋市)を解雇された元教授も解雇無効などを求めて16年12月に提訴した。訴状によると、元教授は15年ごろ、理事会から内密に学部改組への協力と学部長辞退を求められたという。「拒否したら過失をさかのぼって処分された」と主張。15年に学生の個人情報が入った私物のパソコンを紛失したことなどをとがめられたとした。
取材に対し、中京大広報部は「係争中なので回答を控えさせていただきたい」とコメントした。(小若理恵)
◇
姉崎洋一・北海道大名誉教授(教育法・高等継続教育論)の話 こうした問題は、国の大学改革と連動した新しい事態といえる。国立大は学長、私立大は学校法人の理事会の権限がそれぞれ強まった。コーポレートガバナンス(企業統治)の考え方が持ち込まれ、教授会の権限を縮小し、トップの判断を最優先する法改正の弊害が直接的に表れた事例だ。企業と同じ経営手法の適用には無理があり、学問の自由を保障された大学が死んでしまう。労働組合の活動を制限し、組合ニュースのポスティングなど微々たることで懲戒解雇するのは、不当労働行為に当たる。
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しんぶん赤旗(2018年3月8日)
日本大学が危機管理学部とスポーツ科学部で、英語担当の非常勤講師15人全員に雇い止めを通告した問題で、授業を外部業者に委託する計画が再浮上していることが分かりました。首都圏大学非常勤講師組合との団体交渉(2月28日)で日大側が明らかにしました。
文部科学省の見解では、大学が授業に責任をもつために「実際に教育にあたる教員」は直接雇用すべきだという原則を示し、外部委託や業務請負に歯止めをかけています。
日大の授業外部委託計画は、学部当局が昨年11月、非常勤講師に雇い止めの理由として説明していました。
非常勤講師組合は、新設学部の文科省認可に反する計画だと批判。日大は昨年12月13日に文科省から聞き取り調査を受け、その後の団体交渉では、授業は専任教員が担当するかのように回答しました。
ところが、今回の団体交渉で日大側が明らかにしたのは、「ウエストゲイト」という外部業者の講師が実際の授業、採点を行い、専任教員はその場にいるだけという脱法計画でした。
専任教員を教室に配置しても、外部委託講師と連携するために指示を出せば「偽装請負」という違法行為になります。「実際に教育にあたる教員」を直接雇用する原則に反し、専任教員は自分で指導できない授業の単位認定の責任だけ取らされる恐れがあります。
また、専任教員は外部委託講師の授業に出席するだけだから負担が軽いものと扱われ、週10~12コマ程度に出席させられます。もともとの自分の担当授業と合わせて、90分授業を毎日3~4コマ出席し、満足に研究時間を取れない恐れがあります。
日大は、専任教員が専門研究の成果を教育に還元していることを魅力としてアピールしています。学生にとっても、研究を反映させた授業を受けられなくなります。
日大側は、非常勤講師組合との団体交渉では、まだ外部業者との契約を結んでおらず、3月中旬に再回答するとしています。本紙は、偽装請負の疑いなどについて日大に問い合わせましたが、7日までに回答はありませんでした。
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私立大学生の学費負担の大幅軽減と私大助成の増額をもとめる国会請願
【請願趣旨】
現在、日本の私立大学・短期大学(以下「私立大学」)には、大学生全体の約73%(2017年度・約225万人)が学んでいます。数多くの卒業生が日本社会のさまざまな分野で活躍するなど、私立大学はたいへん大きな役割を果たしています。
しかし、私立大学の学生・父母等は、非常に重い教育費負担を強いられています。私立大学学部の初年度納付金の平均額は131万6816円です。高校入学から私立大学卒業までにかかる入在学費用は1人当たり1000万円近くにも上ります 注。
教育は人類にとって必要不可欠な営みです。誰もが教育を受ける権利を有し、教育を受ける機会は均等に与えられなければなりません。諸外国では、高等教育を無償としている国も数多くあります。ところが日本では学費が非常に高額なうえ、奨学金のほとんどが貸与=ローンであり、卒業後の返済額は多額で「奨学金破産」が社会問題となっています。昨年から「給付型奨学金制度」が開始されましたが、対象者も給付額もごくわずかで、極めて不十分なものです。こうした中で、多くの私立大学生が学業に専念できない状況に置かれています。
2012年に日本政府が国際人権規約の「高等教育の漸進的無償化」条項の受け入れを決定したことを踏まえれば、高等教育を含む全ての教育費の無償化をすすめていくべきです。
あわせて、私立大学と国公立大学との間には、国の財政支援に大きな格差があります。国から私立大学への補助(私大助成)を学生1人当たりに換算すると約14万円ですが、国立大学への交付額は学生1人当たり約180万円です。国立大学も私立大学も法律上、同等の高等教育機関であり、このような格差を放置すべきではありません。
1975年に私学振興助成法が制定された際、参議院は附帯決議で経常的経費の2分の1補助を速やかに実現することをもとめました。その後、補助率は29.5%(1980年度)にまで達したものの後退し、現在では9.9%(2015年度)にまで低下しています。そのため、私立大学は学費収入に依存せざるをえない財政状況にあります。
以上のことから、次の各事項の施策の実現を請願します。
【請願事項】
1.私立大学生の学費負担を軽減するため、以下の施策を速やかに実施してください。
①「給付型奨学金」の給付額と対象人数を増やしてください。
②高校で実施されている「就学支援金制度」を大学生にも拡大してください。
③無利子奨学金の貸与基準を見直し、希望者全員が受給できるようにしてください。
2.奨学金の返済は、卒業後の本人所得に応じて負担が緩和されるよう改善してください。
3.大学の学費無償化に向けた計画を立案してください。
4.私立大学の経常的経費の2分の1を補助するよう私大助成を増額してください。
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毎日新聞(2018年3月7日)
県立大(高知市)で勤務していた元契約職員2人が、雇い止めは不当として大学を運営する県公立大学法人と、県立大学後援会をそれぞれ相手取り、雇用継続と給与支払いを求めた訴訟の判決が6日、高知地裁であった。西村修裁判長は「更新の上限が3年以内と明確にされており、原告の採用後に一方的に就業規則が変更されたという事情もない」などとして2人の請求を棄却した。【松原由佳】
判決などによると、原告の女性2人は2013年からそれぞれ県公立大学法人と大学後援会に勤務。年度ごとに契約を更新していたが、就業規則に規定された3年の雇用期間を理由に、15年度末で雇い止めになった。
原告側は、3年の雇用期間が満了しても、従来は公募を通じて事実上優先的に再雇用されてきたと指摘。そのうえで、16年度から急に雇い止めされるようになったとし、解雇権の乱用に当たると主張した。また13年に施行された労働契約法の改正で、今年4月以降、同じ職場で通算5年以上働く有期雇用者は、無期労働契約に転換できるようになる。このため、その対象になる原告2人について大学側が雇い止めにしたと訴えた。一方、大学側は、契約職員就業規則で通算雇用期間の上限を3年と明記しているなどと反論していた。
西村裁判長は、大学側が団体交渉の場で、改正法の存在を強調するような答弁をしていたことに言及した。しかし、大学側が契約期間の上限を明記していたことや、契約職員から準職員になる制度を当時設けるなど、正規雇用主体の職員構成に転換を進めていた点を重視。「16年度に公募をしなかった判断が直ちに(無期労働契約への転換について定めた)労働契約法18条に反するものであったとは言い難い」として、原告の訴えを退けた。
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閉廷後、原告女性2人と支援者らが高知市の高知弁護士会館で報告会を開いた。
原告女性の1人は「誰かが声を上げないと何も変わらない。私たちの裁判を通じて同じように苦しむ全国のみなさんの心の支えになることを切に願う」と話した。また今回の争点の背景になった労働契約法の改正について「働き手を守るための法律が、逆に私たちを追い詰めることになっている」と訴えた。2人を支援してきた県立大教職員組合の田中きよむ委員長は、「無期雇用への転換を阻む脱法行為。労働契約法を改正した意味があるのか」と語気を強めた。
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毎日新聞(2018年3月8日)
繰り返し有期契約を更新して働く非正規職員2人を今春で雇い止めする方針を示した長崎県立大が、長崎労働局から「社会通念上認められない」との指摘を受け、雇い止めを撤回したことが大学や労組への取材で分かった。2人は、契約が更新されれば、契約期間が通算5年を超えた非正規労働者が期間の定めのない無期契約に替われる「無期転換ルール」の適用対象だった。
今年4月から無期転換の申し込みが本格化するのを前に、大学に限らず多くの職場で転換目前の労働者を雇い止めする動きがあり、問題化している。だが労働局の指摘が明らかになったケースはほとんどなく、専門家は「労働局が『無期転換逃れの脱法行為を許さない』との姿勢を明示した意義は大きい」と話す。
長崎県立大や全国一般長崎地方労働組合などによると、2人は学内のサーバー管理などをする、いずれもシステムエンジニア(SE)の男性。うち1人は2004年4月から1~3年ごと、もう1人も13年4月から1年ごとの契約更新などで働いてきた。ともに今年4月に契約が更新されれば、無期契約への転換を大学に申し込めるはずだった。
しかし大学側は昨年10月、2人に雇い止めの方針を伝える一方「県立大での通算雇用期間が5年を超えない」との条件で新たなSEを募集。2人は「無期転換逃れだ」として大学に雇い止めの撤回を求め、労働局に大学への指導を求めた。
労働局が昨年12月に大学に示した文書によると、労働局は2人が繰り返し契約更新されてきた上、大学が新規募集で「通算雇用期間が5年を超えない」との条件を付けた点などを踏まえ「雇い止めは客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当と認められない」と判断。「無期転換ルールを避ける目的での運用は厳に慎むよう求める」と指摘した。
大学側は取材に「指摘を厳粛に受け止め、適切に対応する」と回答。大学は2人を4月以降も雇用し、他の非正規の事務職員らについても通算5年としていた契約期間の上限を事実上撤廃する。
非正規労働者の問題に詳しい日本労働弁護団常任幹事の中川拓弁護士(長崎県弁護士会)は「これまでは雇い止めにされた非正規労働者を法的に救済するのは難しかった。労働局が何度も契約が更新されている実態を重視し、強い姿勢を示した意義は大きい」と指摘する。【樋口岳大】
無期転換ルール
有期労働契約を繰り返す非正規労働者の雇用安定のため、2013年4月施行の改正労働契約法で定められた。13年4月以降に結んだ有期契約が通算5年を超え、労働者が使用者に申し込めば期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる。今年4月から無期転換の申し込みが本格化する。
5年雇い止め続発
2013年4月施行の改正労働契約法で「無期転換ルール」が設けられた後、多くの大学が就業規則を変更し、有期契約の更新を繰り返す非正規教職員の通算契約期間を、無期転換の申し込み権が発生しない「上限5年」とした。このため、労働者側から「脱法的な無期転換逃れだ」との反発が相次いでいる。
早稲田大では、非常勤講師の労組が東京都労働委員会に救済を申し立て、大学側が5年の上限を撤回。東京大や長崎大なども有期雇用職員について5年の上限を撤廃する方針を示した。一方、上限がある東北大では、非正規職員が労働審判などを申し立て、立命館大でも不当な手続きで上限が設けられたとして非常勤講師らが学長らを刑事告発する事態になっている。
非正規労働者の雇用問題に詳しい脇田滋・龍谷大名誉教授(労働法)は「長崎労働局は合理的な理由がない雇い止めは許されないという当然の判断を示した。模範的な雇用者であるべき大学が無期転換逃れをすることは許されず、長崎労働局の指摘は他大学にも影響するだろう」と話した。
同様の問題は大学に限ったことではなく、日本労働弁護団が今月3日に実施した無期転換問題に関する全国一斉ホットラインには約100件の相談が寄せられた。弁護団には医師や航空関連社員、研究機関など幅広い職種から相談があり、厚生労働省も無期転換に関する緊急相談ダイヤル(0570・069276)を開設するなどしている。
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